日本茶を5カ国の同僚に出したら、最初の質問は「これは抹茶?」でした

高知県の煎茶「土佐の緑茶」のパッケージと、黄色みの強い水色の湯呑海外で一福

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オランダのオフィスで、同僚に日本茶を出しました。

用意したのは、高知県の煎茶「土佐の緑茶」。JA高知県のシルバーラベルで、一番茶だけを使った、うま味のあるお茶です。日本にいたころから飲んでいて、私自身がいちばん信頼している一本を選びました。

正直に言うと、少し得意げでした。「これが本物の日本茶ですよ」という顔をしていたと思います。

そして湯呑を配って、最初に返ってきた言葉がこれでした。

「これは抹茶なの?」

味の感想でも、香りの感想でもなく、まず「これは何なのか」という確認から入った。ここが、この日いちばん面白かったところです。

この記事は、味の検証記事ではありません。オランダ人・モロッコ人・セネガル人・ブラジル人・ギリシャ人——5つの国から来た同僚に煎茶を出したときに、実際に何が起きたかの記録です。海外で日本茶を人に出そうとしている方の、心の準備になれば幸いです。

同僚にふるまった高知県の煎茶「土佐の緑茶」のパッケージと、淹れたときの黄色みが強い水色
同僚にふるまったのは、この「土佐の緑茶」です。写真は水の検証記事で撮ったもので、左がオランダの水道水、右が市販の軟水。どちらにしても、濃い緑ではなく黄色に近いことが分かると思います。

先に結論:分かったのは3つでした

分かったこと中身
①「日本茶=抹茶」だった抹茶は知られている。だが煎茶は、その延長線上にあるものとして認識されていない
② 味は「悪くない、でもクセがある」拒否ではない。渋みと磯のような香りが、慣れていない引っかかりになる
③ 反応を分けたのは国籍ではなかった5か国でほぼ同じ反応。唯一違ったのは、日本で暮らした経験がある人だった

③がいちばん意外で、いちばん希望のある結果でした。順に書いていきます。


誰に、何を出したのか

出したお茶土佐の緑茶(JA高知県・シルバーラベル/高知県産茶葉100%・一番茶の煎茶)
出した相手職場の同僚。オランダ人・モロッコ人・セネガル人・ブラジル人・ギリシャ人
場所オランダ・アムステルフェーンのオフィス
前提ほぼ全員、日本茶(煎茶)を飲んだ経験がない

オランダは移民の多い国です。私の職場も、オランダ人だけの職場ではありません。ヨーロッパ・北アフリカ・西アフリカ・南米と、食文化のまるで違う人たちが同じテーブルにいる。「ヨーロッパ人の反応」ではなく、もう少し広い範囲のサンプルが一度に取れたのは、この環境ならではだったと思います。

なお、この記事は反応の記録であって、淹れ方の比較実験ではありません。オフィスで淹れているので、湯温や抽出時間を厳密に管理したわけではない点はお断りしておきます。水と味の関係については、オランダの水道水で日本茶を淹れると味はどう変わる?のほうで実際に測っています。


発見①:最初の質問は「これは抹茶?」だった

冒頭に書いたとおりです。しかも一人ではありませんでした。

彼らの中で、抹茶と煎茶の区別はついていません。というより、「日本の緑のお茶」という大きなひとつの箱があって、その中身が細かく分かれているという発想自体がない、という感じでした。

これは責められる話ではありません。逆の立場を考えれば分かります。日本人がヨーロッパの茶葉を出されて、「これはアッサムですか、ダージリンですか、それともセイロンですか」と即答できるかというと、なかなか難しいはずです。

理由その1:水色が「緑」ではなかった

ここからは私の推測ですが、いちばん大きかったのはだと思います。

オランダで「抹茶」に出会う場所を並べてみると、こうなります。

  • スターバックスやカフェの抹茶ラテ
  • スーパーで普通に売っているハーゲンダッツの抹茶味
  • 菓子やチョコレートの「matcha」フレーバー

すべて、はっきりした濃い緑色です。

一方、私が出した土佐の緑茶の水色は、濃い緑ではありません。上の写真のとおり、黄色みの強い、透き通った色です。煎茶を飲み慣れていれば「良い色だ」と思うところですが、「日本の緑茶=あの濃い緑」という前提を持っている人からすると、目の前のお茶は期待した色から外れているわけです。

だから確認したくなる。「これは抹茶なの?」という質問は、たぶん「これは自分の知っているあれと同じものなのか?」という確認だったのだと思います。

理由その2:香りに、こちらでは出会わない要素があった

もうひとつは香りです。

煎茶には、抹茶と比べても磯のような、海を思わせる香りがあります。日本人にとっては「お茶の良い香り」ですが、これはヨーロッパの飲み物の香りの引き出しには、ほとんど入っていないものだと感じます。

ヨーロッパのスーパーの茶売り場に並んでいるのは、レモン、ベリー、ミント、カモミール、シナモン——果物と花とスパイスの香りです。海藻を思わせる香りの飲み物は、まず売っていません。オランダで親しまれているお茶を見ても、その傾向ははっきりしています。

色が想定外で、香りも未知。この2つが重なれば、「まずこれが何なのかを確かめたい」と思うのは自然な流れだと思います。


発見②:味は「悪くない。でもクセがある」

味の感想は、ほぼ全員が同じ方向でした。

「悪くはない。でも、クセがあるね」

これは拒否ではありません。吐き出されたわけでも、残されたわけでもない。ただ、するっとは入っていかない。「おいしい」と「おいしくない」の間に、「判断を保留している」という第三の反応があるのだということを、このとき初めて実感しました。

引っかかりの正体は、おそらく渋みです。少し渋みがあることに違和感がある、という反応でした。

「渋い飲み物」の位置づけが、そもそも違う

ここも推測です。オランダで日常的に飲まれているものを思い浮かべると、こうなります。

飲み物味の中心
コーヒー苦味。ただし砂糖・ミルクで調整するのが前提
フルーツティー甘い香りと酸味。渋みはほぼない
ミントティー清涼感。生のミントを湯に入れるだけ
紅茶渋みはあるが、砂糖とミルクで丸められる

気づくのは、渋みや苦味が「そのまま出てくる」飲み物が、あまりないということです。コーヒーも紅茶も、甘みや乳脂肪で角を取ってから飲むのが標準です。

ところが煎茶は、渋みを丸めずにそのまま出す飲み物です。しかも私たちは、その渋みを「うま味とセットで味わうもの」として扱っている。この扱い方自体が、共有されていない前提だったのだと思います。

なお、砂糖もミルクも入れずに飲む文化そのものが特殊なのではないか、という点は、なぜヨーロッパでは緑茶ではなく紅茶が普及したのかのほうで歴史をたどって書きました。砂糖とミルクを入れられるかどうかは、緑茶と紅茶の勝敗を分けた要因のひとつです。300年前の話が、そのまま目の前のオフィスで再現されたような気分になりました。


発見③:反応を分けたのは、国籍ではなかった

ここがこの日いちばんの発見でした。

出身国は5つに分かれていました。ヨーロッパ、北アフリカ、西アフリカ、南米。食文化も、宗教的な食の制約も、お茶の飲み方の伝統もバラバラです。モロッコにはミントティーの文化があり、セネガルにも独自の茶の習慣があります。

それなのに、反応はほとんど同じでした。

唯一違ったのは、オランダ人の同僚のうち一人だけです。日本文化に強い関心を持っていて、実際に日本で勤務していた経験がある方でした。その人の反応だけが、はっきり違いました。

「久しぶりに飲んだ。おいしい」

迷いも、確認の質問もありませんでした。

条件反応
国籍・出身地域差が出なかった(5か国でほぼ同じ)
日本茶を飲んだ経験ここで割れた(経験者だけが即座に「おいしい」)

これは、けっこう明るい話だと思っています

ここからは私の推測です。

もし国籍や食文化で反応が割れていたなら、「この地域の人には日本茶は向いていない」という、動かしにくい壁があることになります。生まれ育った味覚は、簡単には変わりません。

でも実際に割れたのは、「飲んだことがあるかどうか」だけでした。つまり今回の「クセがある」という反応は、好みの問題ではなく、単に慣れの問題である可能性が高い。そして慣れは、回数で変えられます。

海外でも認知が進み、飲む頻度が増えていけば、「違和感のあるもの」から「当たり前においしいもの」へ、ポジションが移る余地は十分にある——そう考えています。実際、抹茶はすでにその移動を終えてしまっているわけですから。


「抹茶は知っているのに、煎茶は知らない」という非対称

この日のことを振り返っていて、引っかかったのはここでした。

抹茶は、オランダでもう十分に有名です。カフェのメニューにあり、アイスクリームの定番フレーバーになっている。外国人に抹茶が人気の理由は別記事で書きましたが、知名度という点では、抹茶はすでに勝負がついています。

にもかかわらず、その隣にいるはずの煎茶には、まったく光が当たっていない。

そして皮肉なことに、抹茶が有名になったことが、煎茶にとっては逆風になっているのではないか、というのが私の推測です。

  • 抹茶が「日本の緑茶」の代表として先に定着した
  • その結果、「日本の緑茶=濃い緑色で、甘くて、粉っぽいもの」というイメージが固まった
  • そこへ黄色い液体を出されると、「これは違うものだ」と判定される

つまり煎茶は、ゼロから知られていないのではなく、すでにある強いイメージと戦わなければならない立場にいるわけです。これは、まったく知られていないよりも難しい状況かもしれません。

ちなみに、緑茶と紅茶が同じ木の葉から作られることも、まず知られていません。以前、別の同僚に「それは別の植物なのですか」と真顔で聞かれたことがあります。同じ木です、と説明すると、たいてい驚かれます。


次はどう出すか(ここはまだ仮説です)

先にお断りしておきます。ここから書くことは、まだ試していません。今回やってみて「次はこうしよう」と考えたことなので、検証結果ではなく計画です。結果が出たら、別の記事にします。

案1:最初の一杯を、ほうじ茶か玄米茶にする(ただし今は手に入りません)

今回いちばん壁になったのは、渋みと、磯のような香りでした。だとすれば、その2つが前に出ないお茶から入るのが素直だと思います。

ほうじ茶と玄米茶は、主役が香ばしさです。香ばしさは、コーヒーを毎日飲んでいる人にとって、すでに慣れている方向の香りでもあります。渋みも煎茶ほど立ちません。

これはPickwickの緑茶レビューのFAQでも書いた仮説ですが、まだ実際に出して確かめたわけではありません。

そして、しばらく確かめられません。理由は単純で、オランダではほうじ茶も玄米茶も手に入らないからです。煎茶が置いていない国で、ほうじ茶だけ棚に並んでいるということはありません。アジアンスーパーでも、私はまだ見かけたことがない。

つまりこの案を試すには、次の一時帰国で買って帰るしかありません。「相手に合わせて入口のお茶を選ぶ」という、日本にいれば当たり前の一手が、海外にいるだけで半年先の話になる。ここが、海外で日本茶をふるまうことのいちばん厄介なところだと思っています。

案2:いきなり高級煎茶を出さない

今回いちばん反省したのがここです。

良いお茶を出せば喜ばれるはずだ、と思っていました。でもうま味と香りが強いお茶ほど、慣れていない人にとっては情報量が多すぎるのかもしれません。玉露のようにうま味が突出したお茶なら、なおさらだと思います。

日本茶の中での格の話は高級品と一般品の違いに書きましたが、「良いお茶」と「入口に向いているお茶」は別物だというのが、今回の実感です。

案3:注ぐ前に、色の話をしておく

「これは抹茶ではなくて、茶葉を湯に浸して飲むお茶です。だから色は薄い黄緑になります」——この一言を、注ぐ前に言えばよかったと思っています。

期待と違うものが出てくると、人はまず戸惑いに意識を使ってしまいます。先に「これから出てくるものはこういう見た目です」と共有しておけば、最初の一口を味そのものに集中して飲んでもらえるはずです。これも次回試します。

案4:薄めに淹れる

渋みが引っかかるのなら、湯温を下げるか、茶葉を減らすか、浸出時間を短くするか。高級煎茶の淹れ方で書いた「うま味を出して渋みを抑える」方向に、いつもより一段振ってみようと思います。

本来の実力を出し切らない淹れ方をするのは、正直なところ少し抵抗があります。ただ、二杯目を飲んでもらえなければ、本来の実力を知ってもらう機会もないわけで、そこは割り切るべきなのだろうと考えています。


まとめ

  • 5か国の同僚に煎茶「土佐の緑茶」を出したところ、最初の質問は「これは抹茶?」だった
  • 理由はおそらく水色(濃い緑ではなく黄色)と、磯のような香り。どちらも「知っている抹茶」から外れていた
  • 味の評価は「悪くない、でもクセがある」。引っかかりは渋み。砂糖もミルクも入れずに渋い飲み物を飲む習慣が、そもそも薄い
  • 反応を分けたのは国籍ではなく、日本茶を飲んだ経験の有無だった
  • だとすれば、これは好みの壁ではなく慣れの壁。回数で動かせる可能性がある

正直に言えば、あの日は少ししょんぼりして帰りました。自信を持って出したお茶が、期待した反応をもらえなかったからです。

でも書きながら整理してみると、「まずい」と言われたわけではないのです。言われたのは「クセがある」で、これは要するにまだ知らない、という意味でした。そして日本で暮らした一人だけは、迷わず「おいしい」と言った。

だったら、あと何回か出せばいい。手元にあるのは煎茶だけですが、次は、注ぐ前のひとことから変えてみます。


よくある質問

Q. 外国人に日本茶を出すなら、何を選べばいいですか?

相手が日本茶を飲んだことがないなら、ほうじ茶か玄米茶が向いていると思います。香ばしさが主役で、渋みが立ちにくいからです。ただしこれは今回の経験からの仮説で、私自身はまだ検証できていません。オランダではほうじ茶も玄米茶も売っていないので、次の一時帰国まで持ち越しです。

逆に、いきなり高級煎茶や玉露を出すのは避けたほうが無難だと思います。良いお茶であることと、入口に向いていることは別です。

Q. なぜ「これは抹茶?」と聞かれるのですか?

海外で目にする「日本の緑茶」が、ほぼすべて抹茶だからです。カフェの抹茶ラテも、スーパーのアイスクリームも、菓子の matcha フレーバーも、全部あの濃い緑色をしています。

そこへ黄色みの強い煎茶が出てくると、「知っているあれと同じものなのか」を確認したくなる。知らないから聞いているのではなく、知っているものと違うから聞いている——という順序だと思っています。

Q. 「クセがある」と言われたら、失敗ですか?

失敗ではないと考えています。「まずい」でも「おいしい」でもなく、判断を保留している状態です。飲み慣れないものに対しては、むしろ誠実な反応だと思います。

ここで引き下がらず、二杯目・三杯目の機会を作れるかどうかのほうが大事です。

Q. 砂糖を入れて出してもいいのでしょうか?

私は入れずに出しましたし、今のところ入れるつもりもありません。ただ、頭ごなしに否定する気にもなれなくなりました。

ヨーロッパで紅茶が広まったのは、砂糖とミルクを入れられたからという側面が確実にあります(詳しくはこちら)。相手の飲み方の作法に一度合わせることが、遠回りに見えて近道になる場面はあるのかもしれません。

Q. オランダで煎茶は手に入りますか?

普通のスーパーでは、まず手に入りません。棚に並ぶ「GREEN TEA」は、Pickwickのようなティーバッグが中心です。アジアンスーパーや日本食材店、オンラインが現実的な選択肢になります。

いちばん確実なのは、一時帰国のときに買って帰ることです。人に出す前提なら、なおさら自分が信頼している茶葉を持ってくるべきだと思います。


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