「夢二の宵待草」は最中ではなかった|お茶が主役になる和菓子

白い皿にのせた夢二の宵待草。丸い麩焼き煎餅の表面に金色の焼き模様が入っているお茶の基本知識

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日本から出張で来た人に、和菓子の箱をもらいました。

オランダに住んでいると、これがどれだけありがたいかは説明しづらいところがあります。抹茶味のお菓子は現地のスーパーにも並ぶようになりましたが、餡の菓子はまず手に入りません。日本茶を淹れても、隣に置くものがない。そういう状態が何ヶ月も続いていました。

もらったのは、岡山の敷島堂という店の「夢二の宵待草」でした。

淡い桃色と藤色の和紙の箱に、筆文字。そして「上皇陛下献上菓」と書かれた金色の帯。開けると、同じ柄の紙で一つずつ包まれた菓子が並んでいました。

淡い桃色と藤色の和紙に、「上皇陛下献上菓」の金帯。

食べてみて、正直に驚きました。これは、お菓子が引き立て役に回れる和菓子です。

そして食べ終わってから調べたら、私はこの菓子の正体を勘違いしていたことが分かりました。

この記事でわかること

  • 「夢二の宵待草」がどういう菓子なのか(最中ではありません)
  • 実際に食べた感想と、正直なデメリット
  • お茶請けとして何が優れているのか
  • 合わせてみたい煎茶3つ(※まだ試していません。理由は後述します)

結論:お茶を主役にできる、珍しい和菓子

先に結論から書きます。

「夢二の宵待草」は、お茶請けとして抜群にいい菓子です。

理由は3つあります。

  1. 甘さが控えめで、後を引かない。こし餡なのに、口の中に甘さが居座りません
  2. 油脂をほとんど使っていない。1個あたりの脂質は0.2gです(公式オンラインショップの栄養成分表示)。バターやクリームの風味がお茶を邪魔しません
  3. 手が汚れない。一つずつ包まれていて、乾いた煎餅で挟まれているので、指がべたつきません

和菓子は、それ自体が主役になれてしまう強さを持ったものが多いと感じています。凝った上生菓子を出すと、お茶の記憶がほとんど残らないことがあります。

この菓子は逆でした。菓子の輪郭ははっきりしているのに、お茶の側の余地を残してくれます。

最中だと思った。でも最中ではなかった

袋を開けて最初に思ったのは、「最中のサンドイッチみたいだな」でした。

薄い煎餅が2枚、餡を挟んでいる。丸い形で、焼き目の模様が美しく入っている。最中だろうと思って食べていました。

皿に出したところ。焼き目の模様がそのまま意匠になっている。

ところが、公式サイトの商品説明にはこう書かれています。

北海道十勝産小豆を上品で口どけの良いこし餡に仕上げ柔らかいお餅で包み、生姜砂糖を蜜引きしたふやき煎餅で挟んだお菓子

竹久夢二本舗敷島堂株式会社 公式サイト

最中ではなく、「ふやき煎餅(麩焼き煎餅)」でした。

割ったところ。煎餅の内側に薄い餅の層があり、その中にこし餡が入っている。

最中と麩焼き煎餅は、どう違うのか

最中の皮は「最中種」と呼ばれ、もち米の生地を薄く延ばして焼き型で焼いたものです。焼くと澱粉がふくらんで、あの軽い皮になります。餡を挟む形が考案されたのは江戸時代です。

そして最中の原型は、もち米の粉を水でこねて蒸し、薄く延ばして焼き、砂糖や水飴・蜂蜜をかけた「うすやき」という半生菓子だったとされています(出典:Wikipedia「最中」)。

麩焼き煎餅も、もち米の生地を薄く焼いて蜜を引いた菓子です。

ここからは私の見方です。「夢二の宵待草」の説明にある「生姜砂糖を蜜引きした」という工程は、この“蜜をかける”工程そのものに見えます。だとすればこの菓子は、最中に似せた別物というより、最中がいまの形に分かれる前の姿に近い菓子なのだろうと思いました。

言われてみると、食感の説明がつきます。最中の皮ほど軽くも、乾いてもいない。噛んだときに、ぱりっとしたあとに蜜の層のわずかな粘りがある。あれは蜜引きの層でした。

なお、私は食べている間、生姜の香りだとは気づきませんでした。「和菓子らしい上品な香り」としか感じていません。オンラインショップの原材料表示にも生姜は単独では出てこないので、香りづけの役でごく微量に使われているのだと思います(ここは私の推測です)。

商品の基本情報

項目内容
商品名夢二の宵待草 -上皇陛下献上菓-
製造竹久夢二本舗 敷島堂株式会社(岡山県)
種類ふやき煎餅で、餅で包んだこし餡を挟んだ菓子
主な原材料砂糖(国内製造)、小豆(北海道産)、水あめ、もち米加工品、もち粉(国産)、麦芽糖/トレハロース
1個あたり135.2kcal/たんぱく質1.8g/脂質0.2g/炭水化物31.6g
賞味期限約14日
価格の目安1個270円前後(2026年8月時点)

※ 価格・仕様は変わることがあります。購入前に公式サイトでご確認ください。

「上皇陛下献上菓」の由来は、平成17年(2005年)の岡山国体に上皇上皇后両陛下が参加された際、お茶菓子として献上されたことによります。

もともとお茶と一緒に出された菓子だった、というわけです。食べてから知って、腑に落ちました。

食べた感想

香り

和菓子らしい、上品な香りです。強く主張してきません。

袋を開けた瞬間に部屋が甘い匂いになるようなお菓子ではないので、お茶の香りを先に立てたい席には向いています。

見た目

これは素直にきれいです。

麩焼き煎餅の焼き目が、むらなく、意図した通りに入っています。個包装の和紙も、箱と同じ淡い桃色と藤色。皿に出しただけで整います。

個包装も箱と同じ柄。

お盆と急須を揃えた話を別記事で書きましたが、器を整えたときに見劣りしない菓子だと思いました。

こし餡の甘さは、上品で、決してしつこくありません。

口当たりがなめらかです。粒感がなく、舌の上でほどけていきます。「口どけの良いこし餡」という公式の説明は、そのとおりでした。

そして先ほど書いたとおり、脂質が1個あたり0.2gです。洋菓子的なコクで満足させにくる菓子ではないので、後味が重くなりません。ここが、お茶請けとして効いています。

食感

外側の煎餅のぱりっとした歯当たりと、内側の餅のやわらかさ、こし餡のなめらかさが層になっています。

一つの菓子の中で食感が3回変わります。地味ですが、これがあるから小ぶりでも物足りなさがありません。

手が汚れない

お茶請けとしては、これが想像以上に大きい要素でした。

急須を持つ手が汚れないので、菓子を食べてから、そのまま二煎目を淹れられます。生菓子だと、ここで一度おしぼりが要ります。

正直なデメリット

いいことばかり書いても信用されないので、気になった点も書きます。

子供にはたぶん、ウケません

繊細な食感と、じんわりした甘さの菓子です。

甘さがはっきりしているお菓子に慣れていると、「味が薄い」と受け取られる可能性が高いと思います。大人のお菓子という表現がいちばん近いです。

家族向けの手土産としては、他の選択肢のほうが安全かもしれません。

賞味期限が約14日

日持ちは長くありません。海外へ持って行く場合、輸送と滞在の日数を差し引くと、手渡してから相手が食べられる期間はかなり短くなります。

私がもらったものも、出張者が日本を出てから渡されるまでの日数を考えると、余裕はありませんでした。

海外在住の家族や知人に送るなら、日持ちのする菓子を選んだほうが確実です。

単価は安くはない

1個270円前後です。10個入なら3,000円前後になります。

日常のおやつというより、人に出す菓子、贈る菓子の価格帯です。

オランダで、土佐の緑茶と合わせました

私が実際に合わせたのは、高知の土佐の緑茶(JA高知)です。

理由は前向きなものではなく、オランダの自宅にある日本茶がこれしかなかったからです。日本茶の品揃えのある店が近くにないので、選択肢がありませんでした。(現地で買える「緑茶」を試した記録はPickwickの緑茶レビューにまとめています。)

淹れ方は、市販の軟水を使い、少し低めの温度で淹れています。オランダの水道水は硬度が約140mg/Lあり、そのまま使うと香りと旨みが落ちることを別の記事で実験して確かめているので、日本茶にはボトルの軟水を使うことにしています。

その条件でも、組み合わせとしてははっきり良かったです。

菓子の甘さが控えめなので、お茶の渋みと旨みが後ろに隠れません。菓子を一口、お茶を一口、と往復しても、味が混ざって濁る感じがありませんでした。

「和菓子に合うお茶」ではなく、「お茶に合う和菓子」という順番で成立している数少ない菓子だと思います。

ちなみに、現地の同僚に日本茶を出したときに一番むずかしかったのは「何と一緒に出すか」でした。餡の菓子が手に入らないので、合わせるものがないのです。この菓子が現地で買えたら、あの場面はもっと楽だったはずです。

京都のあんこの菓子と合わせた話は「あんぱん饅」の記事に書いています。あちらは餡が主役、こちらはお茶が主役、という違いがあります。

合わせてみたい煎茶3つ(※まだ試していません)

ここからは未検証です。3つとも私が実際に飲んで、それぞれ記事を書いた茶です。ただしこの菓子と合わせたことはありません。そのつもりで読んでください。

土佐の緑茶で十分においしかったのですが、食べながら「この菓子ならもっと合う茶がある」と思っていました。候補は3つです。

① 特撰煎茶「清流」(美濃白川茶/岐阜)

岐阜県の白川茶は、標高200〜600mの山あいで、朝夕の川霧と昼夜の寒暖差のある環境で育ちます。

そのなかで「清流」(茶蔵園)は、一番茶に初旬摘みの茶葉をブレンドし、中煎りの焙煎で火香を立てているのが特徴です。

この菓子には麩焼き煎餅の焼き目と、蜜引きの香ばしさがあります。香ばしさどうしを揃えにいく組み合わせとして、いちばん興味があります。

この茶そのものについては、美濃白川茶「清流」の記事に産地と味の詳細を書いています。

② 池川一番茶(高知県仁淀川町)

仁淀川の川霧と、山あいの寒暖差で育つ茶です。仁淀川町の観光ポータルでは、品評会で農林水産大臣賞を受けた実績のある産地として紹介されています。

霧の産地の旨みで、こし餡の甘さを受け止める方向です。菓子の甘さが控えめなぶん、旨みの厚い茶を持ってきても喧嘩しないはずだと考えています。

産地と味の背景は、池川一番茶の記事にまとめています。

③ 沢渡茶(高知県仁淀川町)

同じ仁淀川町の、急斜面に茶畑が広がる沢渡地区の茶です。

「優しい味でありながら輪郭がはっきりしている」と紹介されることが多く、繊細な菓子に対して、味の芯が消えないのが利点になると思っています。

飲んだときの印象は、沢渡茶の記事に書きました。

なぜ試せていないのか

3つとも、いまオランダの自宅にありません。

現地で日本茶を買うルートがなく、日本から持ち帰るしかないためです。次に日本へ帰るのは12月か1月の予定なので、それまでこの検証はできません。

できない約束をするより、できていないと書いておくほうが正直だと考えています。試せたら、この記事に追記します。

なお②と③は、どちらも高知県仁淀川町の茶です。私は2027年に高知へ移る予定なので、そのときに産地から書ける茶でもあります。この記事は、そこへの布石でもあります。

竹久夢二と「宵待草」

菓子の名前の由来にも触れておきます。

「宵待草」は、画家・詩人の竹久夢二(1884年生まれ、岡山県瀬戸内市=旧・邑久郡の出身)の詩です。

待てど暮らせど来ぬ人を
宵待草のやるせなさ
今宵は月も出ぬさうな

1912年に雑誌『少女』へ発表され、1913年にこの3行の形で出版されました。房総での旅先で出会った女性を、帰京後に想い続けた経験がもとになっているとされています。

ちなみに「宵待草」という名前の植物は、厳密にはマツヨイグサ属のどれを指すのか断定できていません(諸説あります)。待っても来ない相手を待つ気持ちのほうが、先に名前になったような詩です。

敷島堂は岡山で「竹久夢二本舗」を名乗る店で、邑久に総本店があります。夢二の生まれた土地の菓子屋が、夢二の詩の名前を菓子につけているという構図です。

菓子そのものは、この背景を知らなくてもおいしいです。ただ、知ってから食べると、淡い桃色と藤色の包み紙の意味が変わります。

まとめ

  • 「夢二の宵待草」は最中ではなく、麩焼き煎餅で餅入りのこし餡を挟んだ菓子
  • 甘さが控えめで、脂質が1個0.2g。お茶の味を邪魔しない
  • 手が汚れないので、食べたあとそのまま二煎目を淹れられる
  • 見た目が整っていて、器を揃えた席で見劣りしない
  • 子供にはウケにくい。繊細な食感とじんわりした甘さがわかる人向け
  • 賞味期限は約14日。海外へ送る用途には向かない
  • 実際に合わせたのは土佐の緑茶。火香のある煎茶や、旨みの厚い煎茶を合わせたいが、いま手元になく未検証

和菓子は「お菓子が主役」になりがちです。そのなかで、お茶を主役の側に回してくれる菓子は貴重だと思いました。

日本茶を人に出す機会があって、菓子で決めきりたくないときに、候補として覚えておく価値があります。


よくある質問

Q. 夢二の宵待草は最中ですか?

A. 最中ではありません。公式の説明では「生姜砂糖を蜜引きしたふやき煎餅」で挟んだ菓子です。見た目は最中によく似ていますが、皮の作り方が違います。なお最中の原型は、もち米の生地を焼いて蜜をかけた「うすやき」という菓子だったとされています。

Q. 日持ちはどのくらいですか?

A. 公式オンラインショップの表示では約14日です。手土産としては十分ですが、海外へ送るには短めです。

Q. どんなお茶に合いますか?

A. 私が実際に合わせたのは高知の土佐の緑茶で、相性は良かったです。甘さが控えめなので、お茶の味が隠れません。火香のある煎茶や旨みの厚い煎茶も合うと考えていますが、その組み合わせはまだ試していません。

Q. 子供でも食べますか?

A. 食べられますが、喜ぶかは別です。甘さがじんわりしていて、はっきりした甘さのお菓子に慣れていると物足りなく感じる可能性があります。

Q. どこで買えますか?

A. 岡山県内の敷島堂の店舗と、公式オンラインショップで購入できます。1個から購入でき、5個入・10個入・15個入の化粧箱もあります。価格や在庫は変わるので、公式サイトで確認してください。

Q. 「宵待草」の名前の由来は?

A. 岡山出身の画家・詩人、竹久夢二の詩「宵待草」から取られています。敷島堂は「竹久夢二本舗」を名乗る岡山の和菓子屋です。

どこで取り寄せるか(値段の話)

買える場所を調べたので、値段と一緒に書いておきます。結論は、公式オンラインショップがいちばん安いです。

内容量公式オンラインショップAmazon(他店の出品)
5個入1,566円2,110円+送料250円
10個入2,970円3,823〜4,030円+送料250円
15個入4,374円5,100円+送料250円

※ いずれも2026年8月時点・税込。価格は変わるので、購入前にご確認ください。

楽天市場には出品がありませんでした。AmazonとYahoo!ショッピングには他店の出品がありますが、Amazonは表のとおり公式より2〜3割高いです。急いでいないなら、公式で買うほうが確実だと思います。

公式はこちらです。1個から購入できます。
敷島堂 公式オンラインショップ「夢二の宵待草」

Yahoo!ショッピングの出品と在庫を見たい方は、こちらから確認できます(広告リンクです。値段はリンク先でご確認ください)。

夢二の宵待草をYahoo!ショッピングで探す

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