アムステルフェーンのスーパーでお茶の棚の前に立つと、まず目に入るのはフレーバーティーの多さです。レモンやジャスミンやミントの香りがついた箱が棚の端から端まで並んでいて、その中に緑茶の区画があります。意外だったのは抹茶やほうじ茶がちゃんと置いてあったことで、こういうものはアジア系の食材店まで行かないと手に入らないのだろうと思っていました。
そして値段が、思っていたほど高くありませんでした。抹茶といえば日本から来るものだと思っていましたし、こちらで日本の食品を買おうとするとかなりの値段がつきますから、袋の大きさからして30ユーロくらいはするだろうと身構えていたのです。実際には7.99ユーロでした。ただ、そのあと袋を裏返してみると、どこで採れたお茶なのかが書かれていないものがあって、そこが気になりました。
棚にあるのは、ティーバッグかパウダーのどちらかでした
オランダのスーパーのお茶売り場は日本の感覚からするとかなり広くて、Albert Heijn だと棚の一面がまるごと紅茶とハーブティーに割かれているのですが、その一角に緑茶の区画があります。ただ、そこに並んでいるものを端から順番に見ていくと、茶葉のまま袋に入って売られている煎茶は1つも見つかりませんでした。置いてあるのはティーバッグか、抹茶とほうじ茶のパウダーのどちらかで、急須に茶葉を入れて淹れるタイプのお茶は、すくなくともこの棚には無いみたいです。

これは以前、ヨーロッパで緑茶ではなく紅茶のほうが広まった理由を調べたときに、なんとなく想像していたことと合ってはいました。ただ想像するのと棚の前に立つのとではやはり違っていて、「無い」というのは「種類が少ない」という意味ではなく、本当に1つも無いという意味でした。
緑茶のティーバッグは、ほとんどが何かの味つきです
ティーバッグの棚でまず目につくのは Pickwick で、緑茶の区画の右半分くらいはこの会社の商品が占めています。そしてそのほとんどが、レモンやジャスミンやミントといった、何かの香りがついたものです。香りのついていないただの緑茶を探そうとすると、選べるものはかなり限られます。
値段は、Albert Heijn のオーガニックのシリーズが20袋入りを3個で3ユーロという売り方をしていて、1箱あたりだと1ユーロくらいです。この記事では1ユーロを170円で計算していますので、1箱170円、1袋あたりだと9円かそこらということになります。日本のスーパーのティーバッグと比べても安いほうだと思いますし、味のついた緑茶を日常的に飲む分には、ここで十分なのだろうと思います。
Pickwick の緑茶は以前ひとつ買って実際に淹れてみたことがあって、そのときのことは別の記事に書きました。
同じ棚の中で、値段が一桁違います
棚の右上に、抹茶とほうじ茶のパウダーが並んでいます。10月3日に見たところ、Albert Heijn の抹茶が7.99ユーロ、ほうじ茶が6.99ユーロ、PERFECT Ted というイギリスの会社の抹茶が12.99ユーロ、同じ会社のほうじ茶が7.49ユーロでした。袋に書かれている杯数で割ると、1杯あたりだいたい40円から150円くらいになります。
さっきのティーバッグが1袋9円でしたから、同じ棚の中で5倍から15倍くらいの開きがあることになります。ただ、これを高いと思うかどうかは、何と比べるかによるのだと思います。抹茶を日本で買うことを考えれば、1杯90円のラテ用パウダーはむしろ安いほうですし、少なくとも私は棚の前で、思っていたより安いと感じました。
パッケージの裏を4袋ぶん読んでみました
せっかくなので、袋の裏に何が書いてあるのかを書き写してきました。見たのは Albert Heijn の抹茶とほうじ茶、PERFECT Ted の抹茶とほうじ茶の4つで、どれもミルクに溶かしてラテにするためのパウダーです。抹茶というのは、覆いをかけて育てた茶葉を乾かして石臼などで細かく挽いた粉のことで、お湯やミルクに溶かして、茶葉を濾さずにそのまま飲むお茶です。
まず抹茶のほうですが、どちらもバニラの味がついたタイプで、原材料の1番目が砂糖でした。Albert Heijn のものは砂糖、抹茶30パーセント、バニラの香料という順で、PERFECT Ted のほうはココナッツシュガー、セレモニアルグレードの日本産抹茶25パーセント、天然香料という順です。どちらも割合をきちんと書いてあるので隠しているわけではないのですが、袋の表に大きく抹茶と書いてあるものの中身が、重さでいうと4分の1から3分の1なのだというのは、少し意外でした。


セレモニアルグレードというのは、茶道で点てるための上質な抹茶をそう呼ぶことがある、という程度の言葉で、国が決めた規格があるわけではないようです。PERFECT Ted の袋には、日本の山あいの農園で覆いをかけて育て、手で摘んで、風で乾かして、石臼で挽いたものだと書かれていて、作り方の説明としてはかなり丁寧です。それでも袋の中身のうち抹茶は25パーセントで、残りはココナッツシュガーと香料ということになります。


ほうじ茶のほうは事情が違いました。Albert Heijn のものは原材料の欄が「ほうじ茶」の1行だけで、砂糖は0グラムと書いてあります。PERFECT Ted のものも「焙じた緑茶の粉末(ほうじ茶)100パーセント」で、やはり何も混ざっていません。ほうじ茶というのは緑茶の葉を強い火で焙じたもので、香ばしくて渋みが少ないお茶ですが、同じ売り場の同じようなラテ用のパウダーなのに、抹茶は砂糖入りでほうじ茶は純粋というのは、ブランドの違いではなく、味をつけているかどうかの違いなのだと思います。
もうひとつ面白かったのは、Albert Heijn のほうじ茶の袋に、70度から80度のお湯で溶くようにと書いてあったことです。ミルクに注ぐためのパウダーなのに、指定されている温度が日本で煎茶を淹れるときとほとんど同じでした。こうしたお茶の言葉は日本茶の用語辞典にまとめてあります。


高いほうが、抹茶は少なめでした
値段と割合を並べてみると、少し妙なことになります。PERFECT Ted の抹茶は12.99ユーロで、Albert Heijn の7.99ユーロの1.6倍の値段なのですが、抹茶の割合は25パーセントで、Albert Heijn の30パーセントより低いのです。袋はどちらも75グラムですから、中に入っている抹茶そのものの量は、18.75グラムと22.5グラムということになります。
これを抹茶1グラムあたりの値段に直すと、PERFECT Ted が118円くらい、Albert Heijn が60円くらいで、2倍近い差がつきます。ただ、これをもって高いほうが損だとは言えないと思っていて、というのも PERFECT Ted のほうは産地も等級も製法も袋に書いてあるのに対して、Albert Heijn のほうはそれが何も書かれていないからです。中身の質がどう違うのかは、袋からは比べようがありません。
どちらも買って飲んではいないので、味の優劣はここには書けません。書けるのは、同じ棚に並んでいる2つの袋で、抹茶の量あたりの値段が倍ほど違っていて、そのかわり高いほうには産地と作り方が書いてある、ということだけです。
原産国を書いている袋と、書いていない袋がありました
4つの袋を見ていて、いちばん気になったのはここでした。PERFECT Ted の2つには、英語とオランダ語を含む9つの言語で、原産国は日本、とはっきり書かれています。抹茶のほうには、それとは別に製品そのものが日本産であることも書かれていました。


いっぽうで Albert Heijn の2つには、原産国にあたる記載が見当たりませんでした。袋にある地名は、アルバート・ハイン社の所在地であるザーンダムの住所だけで、これは売る会社の住所であって、茶がどこで採れたかを示すものではありません。
誤解のないように書いておくと、これは Albert Heijn の抹茶が日本産ではない、という意味ではありません。どこで採れたのかが袋からは分からない、というだけです。ただ同じ棚に、産地を9言語で書いてある袋と、何も書いていない袋が並んでいるというのは、買う側からすると結構な差だと思いました。
おもしろいのはほうじ茶のほうで、こちらは2つとも中身が100パーセントのほうじ茶で、値段も6.99ユーロと7.49ユーロでほとんど変わりません。中身がほぼ同じものが並んでいて、違うのは産地が書いてあるかどうかだけ、ということになります。その差は0.5ユーロ、85円です。
ここからは確かめようのない想像になりますが、棚の前で安いと感じたことと、産地が書かれていないことは、どこかでつながっているのかもしれません。日本から来た抹茶だと思って身構えたから30ユーロを想像したわけで、実際にはその4分の1ほどでした。産地を書いている PERFECT Ted のほうが1.6倍高いというのも、並べてみると気になります。もちろんこれは値段と表示を見ただけの話で、中身がどこのものかを確かめたわけではありません。
家に帰って、煎茶を一杯淹れました
家に帰って、持っている土佐の緑茶を一杯淹れました。棚で見たパウダーはどれもミルクに溶かして飲むもので、あれはあれでおいしいのだと思いますが、急須から湯呑に注いだお茶を一口飲んで、渋みを感じることのうれしさのようなものがありました。紅茶とは違う綺麗な水色(すいしょく)で、こちらに来てから紅茶ばかり目にしているせいか、この色を見るだけで少し落ち着きます。遠い日本を感じる、ちょっとした瞬間でした。

今回、確かめられなかったこと
正直に書いておくと、裏まで読んだのは味のついた抹茶2つと、ほうじ茶2つの合わせて4袋だけです。同じ棚には味のついていない抹茶も2種類あって、そちらの裏面はまだ読んでいません。味がついていないのなら原材料は抹茶だけのはずですが、確かめていないので分かりませんし、原産国が書いてあるかどうかも同じく分かりません。
次に行ったときにその2つの裏を見て、分かったことはこの記事に足しておきます。
さいごに
オランダのスーパーの緑茶売り場には、茶葉の煎茶は売っていません。そのかわり、味のついたティーバッグが1袋9円で、ミルクに溶かすパウダーが1杯40円から150円で並んでいて、産地を書いてある袋と書いていない袋が隣り合っています。日本から来た人間としては物足りない棚ですが、お茶の飲まれ方がこちらとは違うのだと考えれば、これはこれで筋が通っているのだと思います。
こちらの水で日本茶を淹れてみた話はオランダの水道水で日本茶を淹れるに、現地の同僚に出したときのことはこちらの記事に書いてあります。日本で茶葉を選ぶときの話は高級煎茶のおすすめと選び方にまとめました。
今日飲んだのが土佐のお茶だったのは偶然ですが、年末には高知に住むことになっているので、同じお茶をあちらで淹れたらどう感じるのかは、いつか書いてみたいです。



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